コロナの影響でおうち時間が増えたことや、TVやYouTubeで「駅ピアノ」などのストリートピアノが流行っている影響で、最近ピアノに興味のある方が増えているようです。
自宅の練習のためにピアノの購入を考えている方の中には、電子ピアノかアコースティックピアノかで悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
『どの楽器を選ぶか』それは、その後の楽しみ方や上達の仕方に大きく影響してきます。
ピアノという楽器について理解した上で、ご自分の目的に合った楽器を選んで、ピアノのある暮らしを長く楽しんでいただきたいです。
この記事では、電子ピアノとアコースティックピアノの種類と選び方についてお話します。
*もくじ*
電子ピアノの普及
私がピアノを教え始めた23年ほど前は、生徒さんのほとんどは、アップライトピアノで練習をしていました。家にお母さんが子どもの頃使っていた楽器があるという人も多かったように思います。
今では、電子ピアノで練習をしている人が大半です。
体験レッスンなどで、「アコースティックピアノは、家に置けないので、電子ピアノについて詳しく教えて欲しい。」と尋ねられることが増え、電子ピアノについてほとんど無知だった私は、必要に駆られて、楽器店に行き、試弾させてもらい、電子ピアノについて教わりました。
説明を受けて、その種類の多さに驚きました。そこには、様々な多機能で利便性の高い電子ピアノがありました。
電子ピアノの利点
<電子ピアノの利点>
・価格が安い
・強度が高く、調律など定期的なメンテナンスが不要(必要なのは電気代だけ)
・ヘッドホンで消音状態で練習出来る
・省スペース
・軽量
・つまみ一つで簡単に音量調節が出来る
アコースティックピアノの難点を一掃し、現代人の生活にマッチするように作られたのが電子ピアノです。
<アコースティックピアノ>
・高価(アップライトピアノ40万円~。月数千円でレンタルもあります。グランドピアノ100万円~)*ぴんからきりまで色々あります
・調律等のメンテナンスが必要(年一度、1万円程度)*メンテナンスをすれば、半永久的に使えます
・騒音問題
・重い(アップライトピアノ200㎏~250㎏、グランドピアノ250㎏以上)
アコースティックピアノの魅力
アップライトピアノ グランドピアノ
アコースティックピアノには、アップライトピアノとグランドピアノがあります。
アコースティックピアノの魅力は、なんといっても、生の「音」です。人の声がそれぞれ違うように、弾く人によって発する音は違います。温かみのある音、澄んだ音、華やかな音、シャープな音等々…
そして、タッチの仕方によって、同じ音量でも、暗い音や明るい音、穏やかな音や激しい音、軽やかな音や重厚な音等々…様々に変化をつけることができます。微妙な心の動きさえも、指先から鍵盤に伝わり、音の変化となって表れます。また、タッチに加え、身体の使い方、ペダルの使い方などで、表現の幅を更に広げていくことができます。
ピアノで表現するのは、弾き手の心です。その音楽をどのように感じ、どのように表現するか、可能性は無限です。アコースティックピアノの持つ表現の可能性は、豊かな感性を育み、演奏技術を磨くことで人間的な感情を音で表す悦びを限りなく与え、引き出してくれます。
生の音、生の音楽の素晴らしさがアコースティックピアノの魅力です。
アップライトピアノとグランドピアノの違い
グランドピアノの特徴
・音色が多彩
・音に微妙な表情をつけられる
・トリルなど細かな連打が思うままにできる
・ピアニシモからフォルティシモまで豊かに響く
グランドピアノは、アップライトピアノに比べ、圧倒的に表現の幅が広がります。
良い音環境(音響)で、グランドピアノで練習すると、格段上達スピードが上がります。綺麗な音を出すタッチになったり、ペダルの使い方が細やかで上手になる等、楽器が感覚で教えてくれる事はたくさんあります。
どの楽器を選ぶか
どの楽器を選ぶかは、ピアノに何を求めるか、ピアノをする目的によって決めると良いです。
「自宅の電子ピアノで、自分で楽譜を読んでポップス等の好きな歌の曲が弾けるようになりたい」
「保育士さんとしてピアノを弾く(最近は園の楽器は電子ピアノが多いです)」
例えばこのような場合は、電子ピアノが良いと思います。
そして、最近の電子ピアノの機能は凄いです。
・内蔵されたオーケストラの伴奏で演奏したり、連弾やアンサンブルが出来る
・blutooth対応で、スマホを使って音楽データを楽器本体から再生しBGMとして聴いたり、一緒に演奏出来る
・パソコンと接続して作曲や音楽制作ができる
等々…他にもアコースティックピアノでは出来ない機能が電子ピアノにはあります。この様な「電子ピアノならではの機能を使って楽しみたい!」という方も、電子ピアノが良いですよね。
でも、ピアノの生の演奏や、CD、YouTube等でアコースティックピアノの美しい演奏を聴き、「ピアノの音色に癒される」「ピアノの音ってきれいだなぁ!」とピアノに魅了され、ピアノを始める場合や、
お子様にピアノを習い事として考える場合に、感性を磨き、心豊かに音楽を学んでほしい、表現豊かにピアノを演奏できるようになって欲しいというような事を求める場合は、電子ピアノだと、近い将来、物足りなさを感じるはずです。
それは、電子ピアノの音は、録音した音がスピーカーから出る仕組みで、変えられるのは音量のみなので、表現という部分では、弾き方によって無限に表現の可能性を持つアコースティックピアノの代わりには、絶対なり得ないからです。
電子ピアノとアコースティックピアノは、全く違うということを理解していただけたかと思います。
電子ピアノでの練習で生じる問題点
私は、普段グランドピアノでレッスンをしています。ピアノのレッスンは、どこの教室でもたいていアコースティックピアノでします。
レッスンの時生徒さんが、
「あれ⁈…家ではちゃんと弾けてたんですけど。」
と首をかしげながら、何度も納得いかず、弾き直す場面がよく見られます。
以前私は、そんな時、楽器の違いによる弾きづらさもあるとは思っていましたが、私の前で弾く事で緊張したり、練習不足の言い訳をしている部分もあるのでは?と内心思っていました。
でも、コロナで最初の緊急事態宣言の時、生徒さんに自宅で演奏動画を撮ってもらい、添削する形のレッスンをしたとき、そこで、初めて生徒さんが自宅の電子ピアノで弾く様子を見て、それが誤解であったことに気付き申し訳なく思いました。
雑な音になる、タッチが弱すぎる、強弱の幅がない、音の粒がそろわない、ペダルのタイミングがうまくいかず濁る、等々…いつも度々レッスンで注意していることは、自宅の電子ピアノで弾くとそうはなっていない(そうは聴こえていない)のです。だからレッスンで習得したことも、自宅で練習するとまた元に戻ってしまい、同じ注意を受けるという繰り返しになってしまっていました。
私が想像していたよりもっと、電子ピアノで練習している生徒さんは、その違いによるストレスを抱えながらレッスンでピアノを弾いていたと思います。自宅での練習の様子を講師が把握する事が必要だと強く感じました。
ですので、レッスンの時だけでなく、発表会など、アコースティックピアノで弾く事を目標にしていて、自宅での練習を電子ピアノでしている場合は、楽器の違いから、充分練習をしていたにもかかわらず、本番でうまくいかず悔しい思いをする事はよくあります。
住環境の問題
電子ピアノからアコースティックピアノに買い替えたくても、住環境・騒音の問題で、やむを得ず電子ピアノで練習している方は多いです。
そして、防音を考える場合、防音対策をすることによって音響面が悪くなり、せっかくのアコースティックピアノの美しい響きが失われてしまう場合もあるので、注意する必要があります。現代では、音環境・音響の良い状態で、アコースティックピアノの練習が自宅で気兼ねなく出来るというのは、難しい場合が多いと思います。
その点、電子ピアノだと、仕事や家事が終わった夜の時間帯にしかピアノを弾くことが出来ない人でも、ヘッドホンで消音状態で練習出来ます。そういったことから、現代では、電子ピアノがめざましく普及し、アコースティックピアノに取って代わりました。
最近の電子ピアノは、アコースティックピアノのタッチそっくりに作られたものもたくさんあります。ですから、住環境の問題がある場合は、自宅ではそういった電子ピアノで練習し、時々レンタルスタジオやレッスン室のグランドピアノで練習し、表現力を磨くと良いのではないでしょうか?自宅で電子ピアノで練習し、アコースティックピアノの上達を目指すには、工夫が必要です。私は、生徒さん達には、レッスン室を練習用に貸し出ししています。(グランドピアノ練習室貸し出しについてはこちら)アコースティックピアノの表現豊な演奏を楽しみながら、上達していただきたいからです。
「趣味だから」「いつまで続くかわからないから」と電子ピアノを選ぶ方は多いですが、住環境に問題がないなら、アコースティックピアノで習い始めた方が、断然上達は速いですし、表現豊かに音楽を奏でる愉しさを味わえ、長く続く確率も高いと思いますので、私はアコースティックピアノをお勧めします。メンテナンスの事等を考えて、買うのに抵抗がある場合は、月数千円でレンタルもあります。
電子ピアノの種類と選び方
正直、電子ピアノの事をほとんど知らなかった私ですが、楽器店でたくさんの種類の電子ピアノを試弾させてもらい、教わりました。
あくまで私個人の感覚ですが、これからレッスンを始めるのに電子ピアノを選ぶ場合では、20~30万代のレベルのものが良いといわれるそうですが、お値段が30万円以上のものは、内蔵曲が盛り沢山だったり、多機能だったりするため高価になっているので、同じレベルの弾き心地(タッチ、ペダル、音量の幅)でも、機能や見た目がシンプルなものだと、17万円程度のものがありました。
電子ピアノを選ぶ場合は、本当にたくさん種類がありますので、何を求めるかによって決めると良いですね。
まとめ
『どの楽器を選ぶか』は、ピアノに何を求めるか、ピアノをする目的によって決めると良いです。
ピアノをこれから習うために購入を考ている方、買い替えを考えている方は、この記事を是非参考にしてください。
ご自分の目的に合ったピアノを選び、心豊かなピアノのある暮らしを長く楽しんでいただきたいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。